一人法務や総務法務の業務ヒントです。

■ こんなケースに法務・総務はどのように対応すればよいか (1) ■

<1>自社あてに債権譲渡通知が届いたら?

 自社(代表取締役)あてに「債権譲渡通知」が届いた場合、次の2つの事由が考えられます。

① 会社が賃料などを支払っている先(不動産のオーナーなど)や、まだ支払期の到来していない売買代金の支払い先等の事情により、その受取債権(賃料等を受取る権利)を第三者に譲り渡した。

B社によるC社への支払が遅滞し、B社があなたの会社に対して有する賃料債権をC社に譲り渡したケースです。 この場合「賃料債権をC社に譲渡しました」という内容をB社(譲渡人)からA社に通知しなければ、A社としては賃料をC社に支払うべきなのかB社に支払うべきなのか正しい判断ができません。これが「債権譲渡通知書」です。

実際にC社(譲受人)に賃料を支払ったことでA社が債務を免れる(適正な支払とされ、二重に請求されない)ためには、事実確認が必要です。真実ではない、詐欺を目的とした書面が来ることもありますので、その点は留意して下さい。

② 自社が支払うべき金員を滞納しており、その債権の権利を第三者が譲り受けた。 このケースであっても、まずは架空請求ではないか確認を行うようにしてください。

◆ ミニ知識 改正民法と債権譲渡

※この記事はおおよその御理解のための簡単な抜粋です。実際に業務に適用する場合には、詳細を確認して下さい。

改正民法では原則として譲渡制限特約に反する債権譲渡も有効とし、しかし債務者は譲渡制限特約について悪意(知っている)、又は重過失(当然知っているべきであるが、重過失により不知である)の譲受人・その他の第三者に対しては債務の履行を拒むことができるとしています。

<2>取引先から代金を回収したい

取引の前提として「取引基本契約」「売買契約」などの契約を締結しておきましょう。

提供する製品の種類・取引の継続性・単価・製品の引渡し手段などにより必要になる契約はそれぞれの企業で異なります。  また消費者を顧客とする小売業では、その度に契約締結をしないことが一般的です。そのような形態では予め「利用規約」をwebサイト等に公表し、取引の詳細規定を表示しておきます。

代金の入金が遅れた → 取引先の担当部署に連絡 → それでも入金がなされない → 弁護士に依頼する事態になる以前に、社内で実施可能な手段には次のようなものが一般的です。

① 内容証明郵便を送付する   

内容証明郵便で請求を送ることにより生じる効果があります。   

・請求の内容を明文化し、請求の意思を確定的に示す。   

・債権の消滅時効完成前であれば、内容証明郵便から6カ月以内に裁判上の請求をすれば原則として消滅時効が完成しない。現行法での「時効の中断」。

◆ ミニ知識  改正民法と債権の消滅時効

改正民法では消滅時効の原則も変更されることになっています。 (現行法)「権利を行使することができる時から10年間行使しない場合に、時効で消滅する。」⇒ (改正法)債権は、①債権者が債権を行使することをできることを知った時から5年間行使しない場合、または②権利を行使することができる時から10年間行使しない場合、の早い方の時期に時効で消滅。 これ以外にも現行法の職業別の短期消滅時効に関する規定が削除、消滅時効の完成を止める考え方の整理と用語の変更が行われます。

② 支払督促の申立て  

対象:金銭債権  

費用:請求額に応じた費用だが、訴訟と比較すれば費用を抑えられる  

効果:時効の中断の効果がある  

効果:異議申し立てをされなければ仮執行宣言付支払督促が付与される

申し立てる場合は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立てを行います。 債権債務の存在に争いが無く、相手(債務者)の住所がはっきりしている等の要件を満たしているケースに役立つ手段です。

③ 少額訴訟

対象:60万円以下の金銭の支払を求める場合に限定される。

審理:原則として1回の期日で判決をする。

控訴:控訴できない。

効果:判決書に基づき,強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができる。

♠各地の地方裁判所では簡裁民事手続案内などの窓口を設置し、無料で手続きに関する相談をすることができます。裁判所のホームページにも窓口の案内が記載されています。