社内規程 印章管理規程と保管ルール 後編

(3) 印章管理規程で何をルール化すべきか

 社内規程のモデルは、書籍やweb上でいくらでも手に入る時代です。それらを利用して自社の規程として運用する際の要注意点は次の4点です。
① モデルをそのまま利用するのではなく、内容を理解し、自社の機関・部署や事業内容などに合せて現実的な内容に調整する。
② 自社の職務権限規程や稟議規程などと整合させる。
③ 実際の運用に使用する台帳や帳票のフォーマットを同時に作成して、規程と同時に社内承認を得る。
④ PDCAサイクルにより、施行後も現実的な運用とすべく見直しを行う。

 モデル規程ではどうしても条項の過不足が生まれがちですが、原則として定めるべき内容は以下のようなものです。
ⅰ. 自社で登録・使用する印の種類
ⅱ. 印章の登録方法
ⅲ. 印章ごとの押印対象となる書類
ⅳ. 印章ごとの保管及び押印の責任部署
ⅴ. 印章の作成・改廃手続き
ⅵ. 盗難や紛失の際の対応
ⅶ. それぞれに必要な台帳や帳票
ⅷ. この規程の改廃を行う機関

保管や押印の責任者を規定しておくことは、表見代理によるトラブルを防止する手段の一つにもなります。

♦ ミニ知識 民法
(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

社内規程は1種の規程ごとで完結するものではなく、全体の整合性を考慮して整備していくものです。まずはその時点での自社の状況に必要な規程をピックアップし、順を経て進めていくことが最善と思われます。