平成30年現在では、業務用の3Dプリンターを用いれば印影から精巧に印鑑を偽造できるのではないか、とも言われており、テクノロジーの発達が日本の『印鑑文化』を変えてゆく可能性もあります。
実際に、紙の書類に捺した印影だけが使用されていた時代から、現在は電子認証・電子証明、稟議フローもシステム化されています。
 また、日本企業においても外国籍の代表取締役や取締役も多く、国内企業と海外企業との取引も急増。海外の『Signature文化』 と日本の手続きを結び、いかに真正を担保するのか、企業の総務や法務の現場では苦労なさることもあるのではないでしょうか。

 しかし現時点では日本国内の手続や権限の認証には印章が重要な役割を果たしています。今回は現在の印章管理の基本知識と、印章管理規程の重要さについて書きます。
基本となる「印章管理規程」と、附随して「押印稟議」等を包括的に整備することで、安全な管理と、事業の機動性・業務効率のバランスをとることが重要です。

社内規程 印章管理規程と保管ルール 前編

(1) 基礎用語
印鑑:法令上では、印影と照合するための事前に登録しておいた印影。
印章:ハンコ。社名や氏名などが彫られた物。
印影:紙などに印を押した跡。
押印と捺印:法令上では押印というが、意味の差異は無い。責任者の印を押すこと。
署名と記名:署名は自署のことであるが代署で認められることもある。
        記名は自署以外の方法で氏名を記すこと。

(2) 社印の種類
1.代表者印
  外周(外枠)に「○○株式会社」等の法人名称があり、中央に「代表者之印」と彫られてある丸い印章です。
 代表者印は個人の実印にあたります。設立登記時に印影を法務局へ提出(=印鑑を登録すること)し、重要な契約締結、登記の申請、営業許可申請など、企業活動に大きな影響のある行為に使用します。
 法人は、その印鑑を法務局に登録(印鑑を提出する、と言います)しなくてはなりません。商業登記法等により細かく規定がなされていますが、意外に見落としがちな点が下記のものです。
印鑑届書を見るとわかるように、代表者が複数人いる場合は、一人一人の代表者ごとに代表印を登録します。
② 大きさについては商業登記規則で定められています。
 【商業登記規則第九条第三項】
  印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。
③ 現在では、商号にローマ字(アルファベット)、アラビヤ数字、そして&等のいくつかの記号を使用することが可能です。
 【商業登記規則第五十条】
  商号を登記するには、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものを用いることができる。
 【法務省告示 平成14年11月1日施行】 上記の規則にある指定する符号とは下記のものです。
アンパサンド,アポストロフィー,コンマ,ハイフン,ピリオド及び中点

2. 会社印・角印
 会社名だけが彫られている四角い印です。
法的な根拠はありませんが、一般的に請求書、領収証や事例などに押印して使用されます。

3. 銀行印・労務印など
 外周(外枠)に企業や法人の名称が入り、中心にそれぞれ「銀行之印」「労務之印」と彫られており、銀行印であれば金融機関の手続きだけに、労務印であれば社会保険事務所などの労務管理手続きだけに使用するために、他の印とは別に作成保管する企業もあります。こちらも法的な根拠はありませんが、業務効率を考慮して利用されることが多くあります。
上記1.の代表印と比べサイズを小さくすることが一般的です。

4. その他の印 役職印・契約印など
 業務効率を考慮して、部長職などの一定の役職者が権限内の契約締結をする場合や、簡易な契約締結を行う場合に使用するために登録印とは別の代表者印を作成することもあります。
社内の職務権限規程や稟議規程と整合させ、安全に使用することに留意して下さい。