この数日、テレビ等で有名人の遺産争いについて報道されています。
この数年だけでも日本舞踊の流派の承継者争い、紅茶王の非嫡出子と嫡出子の相続争い、そして今回の有名な作曲家の遺産トラブルなどなど、複数の相続トラブルが報道されています。
 遺言さえ作っておけば完璧、というわけではありませんが、特に複数の財産を保有する方、事業経営者、法定相続人が多い方など、あとに残される御家族のためにも遺言を作成しておくことが大切でしょう。また、御本人の希望に合った相続の内容を指定することも遺言の重要な効果の一つです。

■ 家族の居ない方の遺言 ■
 最近は当事務所でも、法定相続人が居ないと思われるクライアントからの御相談をいくつか承りました。自分が支援している団体や福祉団体に遺すなど、遺言者の御希望が実現するように、法的な有効性と現実的な手続きを考慮するために準備をしておくことで安心していただけます。
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 遺言の種類に書きましたが、一般的な遺言書は大きく公正証書遺言と自筆証書遺言に分かれます。まずは自筆証書遺言に関する情報です。

自筆証書遺言 前編

改正民法(一部を除き平成32年施行予定)により、自筆証書遺言の方式緩和がされます。
また、平成30年7月6日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。
施行期日は平成30年7月13日の公布から2年以内とされています。

【自筆証書遺言の方式緩和】
■ 現行法 ■2018年9月現在
 自筆証書遺言を作成するには、財産目録も含めて全文を自筆で書かなくてはなりません。
さまざまな形態の財産をお持ちの方や、不動産であればその特定のために書く文字数も多いなど、全体にかなり根気のいる作業です。
 当事務所のクライアントで、お孫さんの中に体の弱い子がいるためにその子に多めに遺産を渡したい、絵画は長女の奥さんにあげたい、etc.の指定をするために遺言を作成なさいました。 公正証書遺言にはなさらないという御希望でしたので、自筆証書遺言の文案作成を当所でうけたまわりました。
完成した文案、用紙、封筒、書きやすいペンを用意して御自宅を訪問、さて自筆で書くとなると、高齢でいらしたこともあり数ページの遺言をなかなか書ききれません。何度か休憩をとって、やっと完成しました。

■ 改正民法による見直し ■
 今後(一部を除き平成32年施行予定)の改正民法において、自筆証書遺言の方式緩和がされます。これによって、かなり作業が楽になり、書き間違いの防止になるであろうと期待できます。
・財産目録はパソコンン等で作成したものを添付できる
・銀行通帳のコピーや、不動産の登記事項証明書を目録として添付できる
※パソコン等で作成した財産目録には本人が署名押印をして、偽造防止をします。

■ その他の留意点 ■
・自筆証書遺言は、遺言者が他界された後に遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を受ける必要があります。
・自筆証書遺言であっても、その内容、文言、日付などが法的に有効でなくてはなりません。ぜひ専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。