一人法務 法務総務 総務を応援―12-外国人の雇用・採用[後編]

まずは前編の復習です。
服装も日本のビジネス慣習

【外国人を雇用する前に】

1. 在留資格の確認
 注意! 前の勤務先で「採用後の職務と同じ職務」をしていても、
     適正な在留資格保有とはかぎらない。
 注意! 「日本人と婚姻している」だけでは、日本国籍は取得できない。

上記の2点は、誤解している企業担当者が意外に多くいらっしゃいます。

◇ミニ知識  “就労系の資格”と“身分系の資格”とは

♣身分系の在留資格
前編に永住者を除く在留資格一覧(出入国在留管理庁のHPより引用)を載せました。
リストの下の欄にあるグループ「入管法別表第二の在留資格」3種は、
在留カードの表面に“就労制限なし”と記載されています。
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
・定住者
これに
・永住者
を加えた4種の在留資格を身分系の資格と呼ぶことがあります。
(法令用語ではありません)
この4種の在留資格であれば、
適法でありさえすれば就業する職業に制約はありません。
単純労働も可能であり、勤務先の要件もありません。
♣ 就労系の在留資格
前述の在留資格一覧・上の欄にある
「入管法別表第一の一、第一の二の資格」は、
日本で就労する御本人の学歴職歴や職業に関する資格等・
就業予定の職務内容・就業先の要件等が
複合的に合致するかを審査され、そこから許可される資格です。

2. 就労資格証明書(入管法第19条の2)
 採用のために必須ではありませんが、
 許可された就労の内容を証明する文書です。
 本人等が入管に交付申請をすれば発行されます。

3. アルバイトを採用する 資格外活動許可
(入管法法第19条第2項)  
就労して報酬を得ることが禁止されている在留資格や、
在留資格の内容とは異なる就労をする場合に必要な許可です。
在留資格による本来の“活動の遂行を阻害しない範囲内”
が限度ですから、アルバイト等の時間数・
就くことのできない職種が規定されており、
週に28時間以内が限度、風俗営業の職業は禁止されています。
(出入国管理及び難民認定法施行規則第19条)
資格外活動許可 在留カード裏面

【外国人の採用後に企業がすべきこと】

1. 雇用保険、社会保険等の届出は適正に行う。
  ┗ アルバイト等の雇用保険の加入対象ではない外国人雇用の場合は、
  外国人雇用状況届出書をハローワークへ提出します。
  ※2020年3月1日からは、様式に在留カード番号の記載が追加。

 雇用保険、社会保険、就業規則は社会保険労務士に御相談ください。
 当事務所のクライアントには、必要に応じ
 外国人社員の手続きに詳しい社会保険労務士事務所の御紹介を致します。

2. 人事データベースにより在留資格、在留期限も管理する。
 うっかり本人が在留期限を過ごしてしまうこともあり得ることです。

 事業主側でも管理をおこない、期限の4~3か月前には
 アラームが出るように設定しておくことをお勧めします。
 ┗ 在留期間更新許可申請は、中長期の在留者では
  おおむね期限の3か月前から受付けされます。
 ┗ 上述の“身分系在留資格”であっても、それぞれに在留期限が定められています。
  永住者であれば、在留カードの有効期限が交付の日から7年間と決められています。
 ┗ 入社後に、日本人と婚姻、永住者に資格変更、帰化して日本国籍になる、
  等の変更が生じる場合があります。

【外国人を雇用する事業主にお勧め】

 

1. 求人応募を受ける際、雇用する際に、
  本人から提出を受ける書面を社内規程にする。
2. 就業規則とは別に、どのような変更事由が生じたときに
  事業主・会社に届出をするか、その他の事項を定め社内規程とする。

3. 人事部門において、下記の基本的な事項を理解しておく。
  ① 在留カードの見方
  ② 在留資格の種類
  ③ 外国人の義務とされている届出の内容
    ┗ 所属機関に関する届出・住居地の届出など

◇ミニ知識  在留カードの見方    出入国在留管理庁のHPより引用 在留カードの見方

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その外国人本人と企業の体制等により千差万別でしょうが、
事業主側でも外国人の義務である届出等を理解し、
外国人社員が理解できるよう説明を行い、
正しく管理やサポートを続けることが必要です。
 外国人の住居のための不動産仲介、携帯電話の契約など、
中長期在留者向けのサービスを提供する企業も多くあります。

これは金融庁が発行した
「外国人の預貯金口座・送金利用について」というパンフレットです。 
わかりやすい説明が記載されていますので、
事業主が本人に説明する際の参考になるでしょう。

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外国人社員を採用する場合には、本人のためにも
事業主のためにも、あらかじめ慎重な確認が必要です。
グローバルな視点、若い方のマンパワーなど、日本の産業界において必須になった外国人社員。
多様性を理解したうえで、日本の法令に沿い、
どちらの側にも良い社会へと進みつつあるプロセスの時期と思います。  

行政書士で申請取次の証明書を保有する者は外国人の在留資格、帰化手続の専門家です。
個別のケースは専門家に御相談ください。

当事務所では、社内規程・附属帳票や様式を一式として作成整備を承っています。

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