一人法務 総務 総務法務を応援―10― デジタル手続法

少し日が経ってしまいましたが、いわゆるデジタル手続法が
本年5月24日成立、5月31日に公布されました。
社会全体のデジタル化により、
多くの分野で手続きの具体的手段が電子化されつつあります。

簡単に表現すると、次のような内容です。
① 行政手続きは原則オンライン
② 本人確認の手段はデジタル化
③ 添付資料は、行政機関間の情報連携等により省略/添付書類をデジタル化
④ デジタル化のためのシステム等の整備
⑤ デジタル・デバイドの軽減・解消

企業にとって業務効率化の大きな手段となる電子化。
デジタル手続法によって行政機関の手続きの電子化が進めば、
社会全体が同じ方向に向くはずです。

【デジタル手続法】

 正式な法令名はかなり長いものですが、法の趣旨が理解できる名称です。
「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」

関連して多くの法・規則が一部改正されています。下記は略称です。
・行政手続オンライン化法(デジタル行政推進法)
・住民基本台帳法
・公的認証法
・マイナンバー法

行政への手続を電子化し、遠隔地からも容易に申請可能、
業務効率化、ペーパーレス化などが期待されます。

(1) デジタル化の基本原則

 カタカナの三原則が目立ちます。
今回は法案の時点から資料にはカタカナが非常に多くありました。
デジタル化の原則

(2) 実現のための必要事項

 実現に必要な事項として「デジタル・デバイドの是正」が掲げられています。

◇ミニ知識 デジタル・デバイドとは
♣digital divide
インターネット等の情報通信技術を利用できる者と
利用できない者との間の格差をいいます。
情報格差。
個人間、地域差、国家による差などがあります。

高齢、居住地域等の要因で、
行政手続きや日常的な用事をおこなうことが難しい場合に、
インターネット等の技術は非常に大きい助けになります。
国としてデジタル・デバイド解消に向けた活動がおこなわれることに期待しています。

他にも課題として思いつく、
「本人確認・手数料納付」をオンラインで実施する方法は
具体的にどうなるのか。

行政書士は手続きの専門家であるため、懸念する点です。

役所の手続きはあちらへこちらへ

(3) マイナンバー

関連して、マイナンバーの通知カード(紙製の薄いカード)が廃止されます。
廃止後の住民へのマイナンバーの通知手段が、
何になるのかは未だ決定していないようです。
顔写真のある“マイナンバーカード”については、
以前にも書きましたが、申請が必要なためか、
メリットが理解されていないためか、なかなか普及率が上がらない状態です。

【人事労務】

(1) 労働基準法施行規則の改正
本年4月からは社員を雇用する際に必要な労働条件の通知の手段について
ファックス、e-mail等に電子化できることになりました。
従前から「雇用契約書」の方は書面作成を義務付けられていませんでしたが、
「労働条件通知」の方は書面、法定の記載事項、が定められていたため、
たいていの場合で「雇用契約書 兼 労働条件通知書」として
紙媒体により書面を取り交わしていました。

参考<労働基準法施行規則第5条>
4 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、
労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。
ただし、(※1)当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる
次のいずれかの方法によることを希望した場合には、
当該方法とすることができる。
 一 ファクシミリを利用してする送信の方法
 二 電子メールその他の(※2)その受信をする者を特定して
情報を伝達するために用いられる電気通信(
電気通信事業法(略)第二条第一号に規定する電気通信をいう。
以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法 (※3)
(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより
書面を作成することができるものに限る。)

上記の改正条文を見ると、下記の3つの要件がありますので
人事担当の方は御留意ください。
※1 労働者本人が希望した場合に限定
・・・本人の希望を確認せずに会社側だけの判断で
メール等に代えることはできません。
※2 受信者が特定できる通信
・・・誰でもが閲覧できるボード等にアップロードではなく、
本人に対して送信する手段を利用する。
※3 受信した労働者本人がプリントできるようにする。

クラウド上での人事労務ソフトも多くあり、
人事評価、研修、行政への手続きと、
多様な目的に活用できるため採用計画にも役立ちます。

(2) 社会保険・労働保険関連の手続き
 担当部門の方はすでに御存じのとおり、
雇用保険被保険者資格取得届/喪失届、健康保険、労働保険確定保険料申告などの
定期的な業務~三六協定届などの業務が電子申請で行えます。

e-Govのお知らせ画面

※本年7月1日から旧様式は使えなくなりました。

労務管理の業務は煩雑な上に大量になりがちです。
担当社員にとって電子化は歓迎すべき動きです。

【このタイミングで事故】

日本年金機構が、です。

今月、日本年金機構の東京・有明の事務センターが、
個人情報を含む年金関連データを収載した複数枚のDVDを紛失したそうです。
日本年金機構と委託業者の間で送付したもので、
暗号化処理されおり今のところ外部への情報漏洩は確認されていないことからか、
7月29日現在、未だに年金機構の事務処理誤りのページでも公表されていないようです。
日本年金機構のHPより
お客様に説明誤りを行った事例集と事務処理誤り等について

次の記事を参考にさせて頂いています。
Excite ニュース

サイバーセキュリティ.com

下記は日本年金機構のHPより引用 

日本年金機構のHPでの公表

情報化により安全に、効率的に、コストも軽減しながら業務を行いたいものです。