一人法務 総務 総務法務を応援―15-契約書[2]―民法改正への準備

民法改正による企業法務への影響――保証契約

民法改正(債権法改正)による、企業法務・法務実務への影響を踏まえ、
何回かに分けてポイントを御説明します。
どこまで準備しなくてはならないか、の御参考です。

【保証契約】
民法改正のうち債権法、中でも保証契約は大きな改正点の一つです。
前回の平成16年改正も同様ですが、
“保証人保護”の方向に改正されます。

 (1) 根保証――極度額の定め

■ 改正民法 第465条の2 第2項
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

極度額を定めていない個人根保証一般(※注1)について、
保証契約は無効と改正されます。
※注1
現行法では、「貸金等債務を主債務としている個人根保証」が
この規定の対象ですが、
それを個人根保証一般にまで拡大するものです。

☆契約実務における留意点☆
1.“貸金以外の債務”の保証では、賃貸借契約、高齢者等の施設入所契約、
入社の際の保証人等も根保証に該当します。
個人保証をたてる場合に極度額の定めがなければ、当該保証契約は
無効になってしまう
点に留意して下さい。
不動産仲介業・不動産管理業などの事業会社で
借家の更新のケースは特に注意したいものです。

契約書は慎重に

(参考書籍)
一問一答 民法(債権関係)改正――日本商事法務
発売日:2018/03

2. 保証会社が、その会社が保証を履行した場合の求償権に関して
個人保証を要請してくることがあります。
この個人保証も改正法が適用されますので、保証会社としても御留意ください。

(2) 根保証――元本確定事由
■ 改正民法 第465条の4
こちらも、次の元本確定事由の適用が個人根保証一般にわたることに変ります。
・保証人の財産の強制執行・担保権実行
・保証人の破産
・主債務者又は保証人の死亡

(3)個人保証
■ 改正民法 第465条の6、第465条の9

事業のための資金借入の個人保証について、次のとおり規定されることになります。
<原則> 
保証契約締結前1か月以内に、以下の様式で
公正証書を作成しなくてはならない。
① 主債務に関する所定の事項を、公証人に口授し、保証債務履行意思を示す。
② 公証人が口授し筆記し、読み聞かせる。
③ 保証人になる者が署名捺印する。
④ 公証人が署名捺印する。

<例外>
保証人になる者が次の者であれば、公正証書作成は不要。
① 主債務者が法人:理事、取締役、執行役、これらに準ずる者
② 主債務者が法人:総社員または総株主の議決権の過半数を直接、間接に有する者
③ 主債務者が個人:共同して事業を行う者
④ 主債務者が個人:その事業に現に従事している配偶者

☆契約実務における留意点☆
例外に該当しない場合、規定の様式で公正証書を作成しなければ保証契約の効力を生じません。

(4)保証契約締結時、締結後の情報提供義務
改正民法 第465条の10、第458条の2、第458条の3

1. 事業のために負担する債務の個人保証を委託するとき
「主債務者」⇒「保証人」へ保証契約締結前に情報提供
① 主債務者の財産及び収支の状況
② 他の債務の有無、額、履行状況
③ 他の担保の有無、内容

☆契約実務における留意点☆
情報を提供しない、または正確な情報を提供していないことで保証契約を締結し、
債権者がその事実を知り得た(又は知っていた)ケースでは、
保証人はこの保証契約を取り消すことが可能です。
そうなると、債権者サイドの実務としては、
保証契約締結前に、情報提供の状況を
保証人に確認することが現実的な予防策になりそうです。

2. 「債権者」⇒「保証人」へ保証契約締結後に情報提供
① 保証人から請求のあったときは、主債務の元本、利息、違約金等の額、および不履行の有無、残額等の情報
② 主債務者が期限の利益を喪失したときには、2か月以内にその旨を個人保証人に通知

☆契約実務における留意点☆
違反したときには、実際の通知までに発生した遅延損害金は
保証を請求できません。

契約締結後の無効