契約書・合意書・同意書・念書・誓約書・覚書
タイトルは何にするのか?  ひな形・文例の使い方ヒント

たとえば事業系部門の担当で、会社の事務、まして法務の仕事には縁のなかった方が書籍やweb上のひな形を利用して社外との文書を作成するとき。
契約書? 誓約書?
取引先から受け取った書類が、権利義務に関連するが、どこを確認すればいいのか?

個人が、書類に署名捺印することを求められたとき。
相続した不動産を知人に売却するとき。
知人に金銭を貸すとき、借りるとき。

さまざまな場面で、相手方のある、一定の文書を作成する・署名を求められることがあります。

本日は、契約書・合意書、etc. の文書作成について、
タイトルのそれぞれと、ひな形・文例を使う際の留意点ヒントです。
今後も継続してヒントをお知らせします。

Ⅰ.意義 なぜ文書が必要か

◇ミニ知識  「私的自治の原則」 と 「契約自由の原則」◇
1.私的自治の原則とは
私法上の大原則。
大雑把な説明としては、
個人対個人の関係を(法に違反したり、他者に損害・迷惑を与えない限度で)、それぞれの意思で決めること。
2. 契約自由の原則とは
私的自治の原則から派生。
こちらも法に違反したり他者に損害迷惑を与えない限度で、私人間の契約はそれぞれの意思に任されること。
※どちらも公序良俗、弱者保護等のための制限はあります。

<なぜ文書にするのか>
① 内容の誤解、失念、思い込み、解釈の相違等を防止する。
② 後日に証拠となる。

例えば借地問題
「父母の代から住んでいる住居の土地は借地。
この60年、自由に建替えをして住んでいた。
地代はとても安く、地主はよく知っている人なので大丈夫!
そのため親同士の取り決めの内容は聞いていないし、契約書などは何も存在していない。
ところが、
地主にも相続が起こり、現在の地主から借地契約更新拒絶をされた。」

本日は、契約書・合意書、etc. の文書作成の意義と基本知識です。
企業の活動だけに限定されず、個人と個人であっても重要な事項は書面(要件を満たせば、電子契約も可能)にすることで、お互いの解釈を合致させ、いざという際のトラブル解決につながります。

Ⅱ.文書のタイトル・名称は何にすればいいのか

トラブルになった際に、文書のタイトルで法的効力が異なることはありません。
「契約書ではなく覚書ですから、気軽に署名してください。」というのは、詐欺まがいの発言。
内容が明確で、日付や本人であることが正しく表されていれば原則として有効です。
トラブルになった際に問題になるのは、その内容です。

契約書・合意書・同意書・念書・誓約書・覚書 etc.

① 相手方の有無
お互いの合意を内容としているか、一方当事者が相手に向けて提出する文書なのか、という点もタイトルを決めるポイントです。

「契約書」「合意書」
   お互いの意思が記載されている=相手方がある文書です。
「誓約書」「念書」
   一方から一方へ提出する文書です。
「覚書」はそもそも国家間における情報伝達形式の一つということですが、民間では契約書に至るまでの条件を書面化することがあります。

② できるだけ内容を端的に表しているタイトルにする。
「契約書」・・・取引のある場合に使うことが一般的。
   取引基本契約書、売買契約書、労働契約書、業務委託契約書など。

「合意書」・・・取引の無い場合での合意にも使う。
   土地境界確定合意書、返済期日延期に関する合意書、など。

「誓約書」・・・一方の当事者が相手に対して提出する。
   機密保持誓約書、入社時の誓約書、など。

Ⅲ.ひな形・文例・テンプレートを利用する際の注意点

 

① 新しい作成日
法令、規則は改正されていくものです。
新しいものを選ぶこと、関連する法の改正日を確認し改正後の作成日付のものをみつける。
② 政府・行政庁・弁護士会など、信頼できる作成者
テレビ番組、書籍、webサイト、どれも必ずしも正しい知識を伝えているわけではありません。
私的な団体等の作成したものは避け、信頼できる作成者をみつけましょう。
③ テンプレートそのまま、は使えない
ケースにより内容はさまざまにカスタマイズする必要があります。

Ⅳ.ひな形・文例・テンプレートの具体的な注意箇所

下記は、実際に一般の方から見せられた誤った箇所の例です。
1. 甲と乙(当事者)が逆になっている。
2. 用語の定義がないまま、「本業務」などと書いてある。
「本業務」は何を指しているか、が前提である。
3. 埋めるべき欄を空欄にしたままである。
  e.g. 本契約終了後[ ]年間は有効とする。

  ※特に合意管轄の条文について御説明します。

◇ミニ知識 「合意管轄」とは◇
民事訴訟において当事者の合意に基づいて生じた法律上の管轄と異なる管轄。
民事訴訟法第11条により、当事者は第一審に限り合意により管轄裁判所を定めることができます。

東京にある会社が、もし相手方の支社のある大分県の裁判所で訴訟に対応することになれば、弁護士を探し、大分裁判所まで出張し、と大変な費用と煩雑な対応が必要になります。
小さな会社であれば業務に支障が起きるでしょう。
そのため、お互いの利便性を考慮し契約時にどのエリアの裁判所であるかを契約書で定める条文です。

◇ミニ知識 裁判所の種類◇
上記の契約書の条文は“地方裁判所”という部分を規定する意味でありません。
日本の裁判所には次の種類があります。
・最高裁判所
・下級裁判所
┗ 高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所および家庭裁判所
管轄についてもルールがあります。
<職分管轄・審級管轄>
・第一審:簡易裁判所または地方裁判所
・第二審:地方裁判所または高等裁判所
・第三審:高等裁判所または最高裁判所
・人事訴訟(婚姻や親子関係):家庭裁判所
・簡易裁判所は訴額が140万円までの訴訟など

webサイトでのテンプレートや文例の検索が容易になったことで、かえって誤った使い方が増えたように懸念しています。
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