家族/身寄りのない人の終活

今までもいらっしゃったはずですが、この数年で「お一人様」「孤独死」「ソロ」という単語が頻出するようになりました。
個人的には勝手な解釈であてはめているこの類の流行り単語はあまり好きではありませんし、人の希望はそれぞれと考えます。
上野千鶴子さんの著書「在宅ひとり死のススメ」も参考になる書籍です。

本日は配偶者/親/子/兄弟等の身寄りがない方の終活について、ポイントを書きます。

余談ですが、日本人の平均寿命の年次推移をあらためて確認すると驚くのではないでしょうか。
戦後20年で飛躍的に寿命が延びました。

(1)相続人の存在の確認

原則として法定相続人となるのは、被相続人(死亡した人)の親族です。
誰が相続人になれるか、詳細は相続のページを御参照ください。

◇間違えやすい 「誰が相続人か」◇
亡くなった方の知人が「Aさんには相続人が居ないんです。だからAさんの甥から連絡があったんです。」とおっしゃることがありました。
しかし、甥が居るというのは、法定相続人が存在する、ということです。
甥=被相続人Aさんの兄弟姉妹の子。
先順位の相続人がいない場合、Aさんの兄弟姉妹(=甥の親)がAさんより前にすでに死亡しているのならば、代襲相続により甥はAさんの相続人です。

<相続人の確認のために、何をしておくか>

大人になって疎遠になった後に、自分の兄弟姉妹が婚姻したり、養子縁組をすることもあり得ます。
付き合いが続いているならば、兄弟姉妹の環境は聞いておきましょう。
戸籍謄本を本人以外が取得するには、直系の親族は役所で交付を受けることができますが、兄弟姉妹は委任状が無ければ交付を受けることができません。
専門家が遺言作成を受任したり、その遺言執行者になっている場合には、法定相続人が本当に存在しないのか確認をすることができます。

(2)自分が身体的に弱ったときや、認知症になったときに世話をしてくれる人が居るか

1. 身体的に弱った状態に備える
判断力はしっかりしているが、病気や高齢により身体的に自分で、サービス契約・病院や金融機関の手続き等ができなくなることがあり得ます。
その場合は「財産管理委任契約」で、信頼できる人や専門家に委任をしておきます。
この契約は、考える力はしっかりしている状態が前提です。

2. 認知症に備える
 認知症になってしまったときに、御本人を守るために後見人が付くことがあります。裁判所の選んだ弁護士等がなることが不安であれば、考える力がしっかりしているうちに「任意後見契約」を締結し、自分が信頼できる人に後見人になってもらえるように準備しておきます。

3. 尊厳死宣言
 当事務所で特にお勧めしているのが公正証書での「尊厳死宣言」です。
延命措置を受けたくない方が自分でその意思を表示できない場合には、必須の書面です。

(3) 自分が死んだ後のこと

1. 死んだ後の片付け、支払い等の事務
 身寄りがない方が気になる事項として、自分が亡くなった後に各種契約を解約・光熱費や病院への支払い・遺品の片付け、etc. こまごまとした事務がたくさんあります。
死亡した後でもNHKの解約ができず、口座からずっと受信料が引き落とされている状態に遺族が困惑した、というニュースも最近のことです。
「死後事務委任契約」
 頼める人がいる場合は、御本人が元気なうちに、亡くなった後の細かな事務を委任しておきます。
契約行為であるため、相手の方が受諾して契約書を締結します。

2. お墓、葬儀、ペット、遺産の分配、寄付、認知など まとめて決めておく
 やはり公正証書遺言を作成し、気になることを定め、遺言執行者を遺言の中で決めておくことが最善です。
身寄りがない=法定相続人がいない、という状況です。
自分の死後に国庫に帰属させるのか、支援している活動に寄付する/お世話になった方に遺贈する/自分の希望する葬儀を遺産で行なってもらう、etc. 御自分の希望をわかりやすく遺言にしましょう。

遺言執行者を遺言の中で指定しておくことで、遺言の内容を実現してもらいます。
いくら遺言を作成しても、だれも遺言の存在を知らない/執行する者がいない、のでは無意味です。
特に、身寄りや家族のいらっしゃらない方であれば、遺言作成が最重要と言えます。
準備をして、ホッと安心して過ごしましょう

法的有効性、予定される遺産目録など、遺言は専門家に御相談ください。
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