小さな会社の総務・法務 「実質的支配者リスト制度」BOリストで業務効率アップ

2022年1月から運用開始「実質的支配者リスト制度」 BOリストで効率化
マネーロ-ンダリング、テロ資金供与の防止

BOリスト見本

2022年1月31日から実質的支配者リスト(BOリスト)制度の運用が開始されます。
今回はそれが総務の実務として効率化につながる可能性、というお話です。

以前のコラムで“遺言執行者の口座が作れない”というテーマで書いたことがありますが、現在、金融機関ではマネー・ローンダリング等を目的とした法人の悪用を回避するため、法人の実態を把握することが必須になっています。

そのため、銀行口座の新規開設だけでなく、定期的な口座名義人の実態確認、一定の金額以上の送金手続き等、会社の総務や経理担当者はその都度、定められたプロセスに対応しなくてはなりません。
・銀行窓口の予約をとり
・必要とされる書類を揃え
・窓口に行く担当者個人の身分証明書
・ケースによってはその金額を送金する目的の根拠書類
小さな会社の総務、管理部門としてはこの作業や日数を少しでも軽減したいものです。
また、これにかかる日数が長くなり事業上の支障が生じることもあるでしょう。

◇ミニ知識 BOとは◇
Beneficial Owner 実質的支配者
簡単な例として、反社会的勢力の自然人が100%株主(=実質的支配者 BO)で、取締役は犯罪歴も無い一般人が就任している企業をイメージして下さい。

 ♠「実質的支配者リスト制度」

 2022年(令和4年)1月31日から運用開始される本制度では、法人の実質的支配者に関する書面を法務局に保管→必要に応じて登記官の認証文言付で交付を受けることができます。

■本制度を利用できる法人・・・株式会社及び特例有限会社
■対象となる実質的支配者・・・「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」第11条第2項第1号・第4項の自然人に該当する者。
対象となる実質的支配者とは、(1)又は(2)のいずれかに該当する者ですが、どちらも当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合は除かれます。
これらに該当する支配者がいない場合は、
(1) 会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
(2) (1)に該当する者がいない場合は,会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人

【参考】法務省 対象となる実質的支配者

◇ミニ知識 マネー・ローンダリングとは◇
直訳すると「資金洗浄」
犯罪収益について、その資金の出どころや実際の所有者を隠し、捜査による発見や検挙を逃れようとする行為です。
日本でも犯罪組織が特殊詐欺や薬物犯罪などの犯罪によって莫大な犯罪収益を得ているのが現状です。
その犯罪収益の大半は金融機関等の提供する、本来は適正であるサービスによってマネー・ローンダリングされ、犯罪収益の摘発から逃げています。
イメージできる典型例としては、下記のような行為があります。
犯罪者が他人名義の預金口座を手に入れる。
そこに詐取金などを入金→他人に引き出させ→別の口座に入金する。
海外にある金融機関、架空カンパニー名義、暗号資産などを組み合わせれば、ますます資金の実態を隠蔽しやすくなってしまいます。

◇ミニ知識 テロ資金供与とは◇
テロ行為の実行資金やテロ組織の活動資金等のために、資金等を調達・移動・保管・使用すること。

BOリスト制度の手続き 具体作業

――2022年1月31日から開始――
申出書、BOリスト、株主名簿、本人確認書類等の一式をそろえ、法人所在地の管轄法務局へ提出して申し出ます。

その内容を登記官が確認

問題がなければ法務局でBOリストを保管

法人が金融機関等へ提出する必要がある場合は、法務局から認証文の付された「実質的支配者リスト」(BOリスト)の交付を受けることができます。

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申出書や株主名簿の作成はそれほど煩雑ではなく、社内で作業可能な内容と予想できます。
この制度利用により、金融機関への対応事務が効率的になることを期待しましょう。
※金融機関によりルールが異なることもあるため、事前に取引店舗で確認なさって下さい。