相続した不動産―2― 売れない土地

売れる土地 「売れない土地」  二次詐欺被害にも注意

今回は身近な不動産に関するトピックをいくつか御紹介いたします。

当事務所では相続案件に付随し、クライアントに売却希望の不動産があれば、
その不動産によって大手不動産業者、パワービルダー、
離れたエリアならば地元の不動産業者などを御紹介しております。

【昭和に流行った原野商法】

相続業務として故人の財産をリストアップしていく中で、
家族が知らなかった土地が出てくることがよくあります。
その中で多いのはこれです。
1960年代~1980年代に流行った“原野商法”
「今は原野でとても安い土地が、
2年後に新幹線が通る計画があるため価格は1,000倍になる」
などという詐欺まがいの商法でした。
これにより原野、山林などを投資のつもりで購入したという事件がいくらでもありました。

 数年前に高齢の女性グループから遺言や相続の御相談がありました。
若い頃から同じ土地にお住いの女性4人。
お互いに気づいていませんでしたが、3人が同じ業者(と思われる)から
40年前に北海道の原野を買っていました。
この方達は、当時のパンフレットや業者から渡された
購入後の土地登記記録のすでに黄ばんだコピーを保管していたためにその存在がわかりました。
推測するに、1980年代にその業者が売りにまわったエリアが住居エリアだったようです。
パンフレットを見ると
“大規模なリゾート開発があるので値上がりする”
という触れ込みであった様子でした。

◆ミニ知識
Q 固定資産税はどうなっている?
A 不動産の中でも固定資産税が発生しないような、
  評価額の低い不動産では固定資産税の納付通知は送られてきません。
  そのため家族や相続人が存在を知らない、本人も忘れている不動産があり得るのです。

◆ミニ知識
Q 二次詐欺被害とは?
A 数十年前に、いったん詐欺まがい商法の被害にあった所有者に対し、
「所有の土地が開発予定地域にはいったので買い取りたい。
 ついては調査費用を負担してほしい。」などと連絡してくる事件が多発しています。

【どのような不動産業者に依頼したらよいか】

上記のような原野は別にして、住宅地や商業地であっても
売れる土地と売れない土地があります。
法的な制限ではなく、単純に人気があるかないか、という意味合いです。

御存じのとおり地価は公示されています。
国土交通省のサイトでは、地価公示・都道府県地価調査の結果を検索ができるシステムがあります。

地番でなく住居表示で検索可能です。
当事務所のある中央区築地を検索してみたところ、下記のような結果でした。
特に4丁目の1平米あたり363万円には驚きました。

<東京都中央区築地の調査結果>

下記は、相続不動産の中で売却に長くかかった栃木県日光市の調査結果です。
住宅地で駅からも徒歩圏内、近くに小学校もありましたが、
更地のまま売りに出して、2年かけてやっと売却できました。
都心の一等地と異なり、このようなロケーションの場合は、
地元にある経験の深い不動産業者に依頼することで、草刈りの手配など
近隣に迷惑のかからないようなメンテナンスや
役所での確認等を包括してお願いすることができます。

<栃木県日光市の調査結果>

平成31年地価公示の概要でも全国平均では住宅地、商業地ともに
連続して地価が上昇していますが、都道府県別の住宅地地価変動率を見ると
7つの県で1%以上価格が下落しています。

 

【低廉な空き家等の売買に関する特例】

社会的に問題になっている空き家、または上記のような安価な土地の売買時の不動産業者への報酬の特例です。

〈依頼者の一方から受領できる報酬額〉
取引額200万円以下の金額  ⇒ 取引額の5%以内
取引額200万円を超え400万円以下の金額 ⇒ 取引額の4%以内
取引額400万円を超える金額 ⇒ 取引額の3%以内

上記のとおり、不動産業者が受領できる報酬は上限が法できめられています。
しかしこれでは、「売れない不動産」の売却ができても
例えば100万円の土地であれば、報酬上限は5万円にしかなりません。
「売れない不動産」=「売りにくい不動産」ですから、
仲介する不動産業者は広告、メンテナンス、現地調査等さまざまに販売に向けて努力します。
そこで、この特例の意味があるのです。
この特例に該当すれば、売主から上記の上限額と現地調査などの費用を合計した額
(上限が18万円+消費税)を受領することができます。
国土省告示
むろん、その金額は事前に売主と不動産業者の間で合意するというのが前提です。

【「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の成立】

施行日は平成31年(令和元年)6月1日。

相続登記(所有者が死亡後、その相続人に所有権が移転したことの登記手続き)が
されないままになっている不動産が問題になっています。
相続人が存在しても登記していないケース、
そして相続人が不存在のケースと両方があり得ます。
それが建物であれ土地であれ、周囲に危険が及ばないような措置をおこなったり、
活用して開発することも、所有者が不明のままでは進めることが不可能です。
そのような不動産について、法務局の登記官が相続人を探したり、
その不動産の登記に“長期間にわたり相続登記がされていないままである”旨を付記できるようにするものです。
その他にも民法の特例が定められました。

「登録免許税の免税措置」

平成30年11月15日から、一定の“資産価値が高くない土地”について
相続登記の登録免許税の免税措置が始まっています。
対象となる土地は、基本的な方針に基づいて法務大臣が指定する土地です。

 

◆ミニ知識
Q 登録免許税とは?
A 登記の手続きの際に納付する税金のことです。
  不動産登記の税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて決まります。

相続した土地の場合には、土地の価額に対して
0.4%(1,000分の4)の税率がかかるのですが、この免税措置により登録免許税がかかりません。
♣ただし、下記のような要件があります。
① 平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間
② 市街化区域外にある土地
③ 価額が10万円以下
④ その他
この要件を満たすことを考えると、対象はあまり多くないようです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

いたるところで駅前の再開発が進み、どの駅でも似通った風景になりました。
少し淋しい気がします。
虎の門は高層ビルの建設ラッシュです。

下記は23区内の私鉄沿線の駅から徒歩1分の場所の画像です。
1年後には変わるのかもしれませんが、昭和の風景が点在することも興味深いものです。
都心の未開発地区